コロナの流行により、おうち時間が増え自宅で料理を楽しむ人も増えましたね。
そんな中、簡単に美味しくサラダチキンやローストビーフを作ることが出来る低温調理が話題です。
ジップロックに入れたお肉を沸騰したお湯の中に入れ、火を止めて待つだけ!
牛のかたまり肉をフライパンで焦げ色が付くまで全面焼き、アルミホイルに包んで放置!
ネットで検索すると、簡単なレシピがたくさん出てきます。
しかし、その間違った調理法はとても危険です!!
お肉にはカンピロバクターや腸管出血性大腸菌O157など、食中毒を起こす菌が潜んでいます。
間違った低温調理法では食中毒を起こしてしまうかもしれません。
低温調理を行うときは、しっかりと温度と時間の管理をする必要があります。
今回は低温調理の注意点と安全に調理する方法をご紹介します。
低温調理は危険⁉その理由とは
今人気のサラダチキン!今度作ってみようと思っていたのに危険なの⁉
低温調理の火付け役ともいえる、サラダチキン。
インターネットでサラダチキンのレシピを調べてみるとこのようなレシピがでてきます。
鶏むね肉と調味料が入ったジップロックを、沸騰したお湯の中に袋ごと入れ、火を止め余熱で30分で出来上がり!
とても簡単な手順で、自宅でもサラダチキンが作れると紹介されています。
作ってみたい!と思う気持ちも分かりますが、この低温調理の仕方、実はとても危険なのです。
低温調理は低温で加熱するため、お肉が固くならずジューシーで美味しくでき上がります。
しかし、しっかりと加熱時間を確保しないと、肉の内部まで十分に加熱されず、菌が死滅しません。
自宅での間違った低温調理によって、食中毒を起こしたケースも報告されています。
国の食品安全委員会が「調理温度が低いため、殺菌面で十分に気を付けなくてはならない」と注意を呼び掛けている程です。
低温調理を安全に行うためには肉の中心温度と加熱時間が重要な鍵となります。
低温調理が危険な理由と、正しい調理方法をご紹介します。
低温調理とは?
低温調理は焼く・蒸す・煮るに次ぐ、【第4の調理法】とも言われている、今注目の調理方法です。
肉などの食材を耐熱袋に入れ、真空状態にして60~70℃の低温で長時間加熱します。
最近では低温調理の人気の高まりから、専用の低温調理器も販売されています。
肉が固くならずジューシーに仕上がるため、美味しく出来上がると人気の調理法です。
なぜ低温調理だと肉が柔らかいの?
低温調理したお肉は柔らかいけど、他の調理法と何が違うの??
肉のたんぱく質には筋繊維のミオシンとアクチン、結合組織のコラーゲンがあります。
肉を加熱すると、たんぱく質が変性します。変性し始める温度もそれぞれ違います。
変性して起こる変化をそれぞれまとめてみました。
- 50℃から変性する
- 変性すると肉に弾力が出て、旨味に変化⇒美味しくなる
- 66℃から変性する
- 変性すると、肉の水分が抜けて色が変わる⇒固くパサパサな肉になる
- 68℃以上で変性(ゼラチン化)する
- 60℃以上ならゆっくりだが変性が始まる
柔らかいお肉に仕上げたい場合、ミオシンは変性させ、アクチンは変性させないように加熱する必要があります。
50℃~66℃の間で加熱すればいいんだね!
通常の焼く、煮る、蒸す調理法は66℃以上まで加熱され、肉が固くパサパサな状態になってしまいます。
それに比べ低温調理は、50℃から66℃の低温で調理するため、肉が柔らかく美味しい状態で出来上がります。
低温調理はたんぱく質の変性をコントロールする、科学的根拠のある調理法なのです。
低温調理のメリット・デメリットとは
低温調理にはメリット・デメリットの両方があります。
インターネットでは、簡単に美味しくできると、メリットばかり見受けられますが、しっかりとデメリットも覚えておきましょう。
- 柔らかくジューシーな仕上がり
- たんぱく質変性を抑え、食材本来の旨味をそのままキープできる
- 簡単にできる
- 時間がかかる
- 臭みが残ることがある
- 見た目で加熱不足と分からない
- 食中毒のリスクがある
低温調理が危険だと言われる理由は、加熱不足が見た目で分からず、加熱不十分のまま食べて食中毒を起こしてしまうからです。
加熱不足にならないよう、しっかりと加熱殺菌しましょう。
低温調理は危険!鶏肉を調理するときの注意点
低温調理で人気の鶏肉ですが、肉の厚みの差が大きく、熱い部分は加熱不足になりやすい食材です。
低温調理での危険を回避するため、鶏肉の正しい低温調理法を確認しましょう。
鶏肉はカンピロバクター菌に注意!
低温調理で人気の鶏肉ですが、食中毒を起こす危険があり、注意が必要です。
鶏肉が原因で起きる食中毒は、主にカンピロバクター菌が原因です。
カンピロバクター菌はニワトリの消化器官内に生息しています。
精肉する際に高い割合で他の部位に移ってしまうため、市販されている鶏肉にはカンピロバクター菌が潜んでいると思ってください。
鶏肉の食中毒は、生肉や加熱不足が原因で発症します。
- 腹痛
- 下痢
- 嘔吐
- 発熱
- 倦怠感
- まれに血便が生じることもある
大抵一週間ほどで治癒しますが、乳児や高齢者など、抵抗力の弱い方は重篤化する危険性もあります。
カンピロバクターに感染後、数週間後に手足の麻痺や顔面神経麻痺・呼吸困難を起こすギランバレー症候群を発症することがある。
食中毒を起こすと自分が辛いだけではなく、嘔吐物や排出物から二次感染する危険性もあります。
まずは、食中毒を起こさないことが重要です。
鶏肉は何℃で何分加熱すれば安全?
カンピロバクター菌を死滅させるには、肉の中心温度と加熱時間をしっかり守って調理することです。
- 63℃なら30分以上
- 70℃なら3分以上
- 75℃なら1分以上
ここで注意していただきたいのが、中心温度という言葉。
中心温度とは文字通り、肉の中心の温度の事です。
肉の中心部が、63℃まで加熱された状態で30分間その温度をキープして、初めて安全に加熱調理されたということです。
沸騰したお湯に冷たい鶏肉を入れ、すぐに火を止めてしまうと、お湯の温度は急激に下がってしまいます。
温度が下がったお湯の中に付けておいても、中の肉は加熱されません。
それどころか時間が経つにつれ、お湯の温度はどんどん下がっていきます。
お湯の温度が下がると加熱不足以上に危険なことが起こります。
30~46℃はカンピロバクターが増殖する温度帯です。
温度の下がったお湯につけているのは、中の菌を増殖させているようなものなのです。
「鶏肉を入れたら火を止めて待つだけ!」の危険さを理解していただけましたか?
しっかりと肉の中心部が必要温度まで上がった時間から、加熱時間を測定しましょう。
ローストビーフも低温調理では危険⁉
ローストビーフは火加減がとても難しく、なかなか家庭で調理される機会が少ないメニューでしたね。
しかし低温調理法が人気になり、簡単なローストビーフのレシピもよく見かけます。
チキンサラダ同様、ローストビーフの低温調理でのレシピには、危険なものもたくさんネット上にあります。
ローストビーフを低温調理で作るときは、食中毒菌の危険を回避しましょう。
腸管出血性大腸菌O157とサルモネラ菌の危険性
牛肉での食中毒は、主に腸管出血性大腸菌O157とサルモネラ菌です。
- 下痢・激しい腹痛
- 発熱
- 嘔吐
腸管出血性大腸菌O157は、HUS(溶血性尿毒症症候群)や脳症などの重症化し、最悪の場合死に至るケースもある、非常に危険な菌です。
食中毒が原因で死亡するケースがあるなんて怖いですね。
- 悪心
- 嘔吐
- 腹痛
- 下痢
下痢は3~4日続く。小児では意識障害・痙攣・菌血症などを起こし重症化しやすい。
腸管出血性大腸菌O157もサルモネラ菌も、どちらも感染すると重症化のリスクがあります。
高齢者や小さいお子さんがいる家庭では、しっかり加熱殺菌する必要があります。
ローストビーフは事業者が消費者に提供する場合「特定加熱食肉製品」として加熱の基準が定められています。
肉の中心部は63℃以上にしなければならないと規定があります。
- 63℃なら1分以上
- 60℃なら12分
- 58℃なら28分
- 55℃なら97分
ローストビーフは肉が厚いため、中心温度が適温になるまで時間がかかります。
トータルの加熱時間は数時間かかるはずです。
少し手間に思うかもしれませんが、ローストビーフの低温調理での危険を回避するためしっかりと加熱時間を取りましょう。
低温調理でやってはいけない事
低温調理は加熱温度が低いため、食中毒の危険があることは理解していただけましたか??
肉は加熱が十分ではなくても色が変化するため、見た目で判断するのはやめましょう。
肉の中心温度を測るときは、中心温度計を活用するといいですよ!
肉の表面のみ焼いてアルミホイルに包んで余熱で火を通すなど、余熱での調理は危険です。
ネット上のレシピも加熱時間が記載されていない低温調理は、危険ですので避けてください。
メーカーの公式レシピなど、必ず温度検証されたレシピを使って行いましょう。
豚肉・ひき肉・内臓・ジビエ肉は高温ではないと死滅しないウイルスがいるため、家庭での低温調理は絶対にしないでください。
安全に低温調理をするには
低温調理が危険なのではなく、低温・高温に関わらず加熱殺菌不足が危険を招きます。
低温調理とは、低温でも同じ温度を一定に保ち続け、中心温度をしっかりと管理しなくてはいけません。
1番大切なことは、加熱時間は肉の中心温度が目標温度に到達してから図り始めることです。
肉の中心温度を管理するのはとても難しいため、低温調理器を活用しましょう。
低温調理器には、加熱時間基準表がついているものが多く、基準表を基に安全に低温調理を楽しみましょう。
まとめ
低温調理の危険性と、安全に調理するためのルールを覚えていただけましたか??
低温調理が危険なのではなく、加熱不足が危険を招きます。
今回のポイントをおさらいしてみましょう。
- 低温調理法とは低温で長時間加熱し、ミオシン・アクチンなどのたんぱく質の変性をコントロールした科学的根拠のある調理法
- メリットはたんぱく質変性を抑え、食材本来の旨味をそのままキープし柔らかく仕上げることが出来る
- デメリットは時間がかかり、食材によっては臭みが残ることがあり、加熱不足が見た目で分からない
- 市販されている鶏肉には、高い割合でカンピロバクター菌が潜んでいる
- カンピロバクターに感染後、数週間後に手足の麻痺や顔面神経麻痺・呼吸困難を起こすギランバレー症候群を発症することがある
- 必ず肉の中心部が必要温度まで上がった時間から、加熱時間を測定する
- 牛肉での食中毒は、主に腸管出血性大腸菌O157とサルモネラ菌である
- 腸管出血性大腸菌O157は非常に危険な菌であり、HUS(溶血性尿毒症症候群)や脳症などの重症化し、最悪の場合死に至るケースもある
- 余熱調理や加熱時間の記載のないレシピは危険なため、メーカーの公式レシピなど必ず温度検証されたレシピを使うこと
- 豚肉・ひき肉・内臓・ジビエ肉は高温ではないと死滅しないウイルスがいるため、家庭での低温調理は絶対にしてはいけない
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